準備と執筆に5年くらいかかった英語の論集The Bottom Worker in East Asiaがオランダの出版社のBrillから刊行されました。こちらから目次が読めます。https://brill.com/display/title/68217
日本の批判社会学のパイオニアの青木秀男先生と私の編著として、全10章の構成です。これは、名高い学術ジャーナルであるCritical Sociologyと連動した一連のシリーズ本としての刊行です。そのシリーズでは、社会を「説明」するだけでなく、社会に対抗的な知を「作り上げる」ことを企図した著作群が生み出されています。
内容は、日本の都市におけるホームレス、寄せ場労働者、韓国の結婚移民者(結婚移住後に移住国で離婚した人がどのような労働市場に投げ入れられるのか)、バングラデシュのマイクロクレジット利用者、さらには日本の地方の温泉街で仲居として働く人びと(非組織非定住の生き方を強いられた女性が流れ着く)など多様な事例から、そうした人びとの労働と生活を考察したものです。そしてそれらの事例を、アジア圏におけるbottom workerという概念を使って束ねる作業を、青木さん(マクロな社会経済的構造分析)と私(ミクロな生活世界分析)でおこなった、というものです。
この編集の仕事をしながら改めて痛感したのは、英語で書くのは、英語ができる/できないというだけでなく、母語において自明とされている前提を照らして、それを言語化するという「立ち位置の移行(under-standing)」の問題が、深く関わっているという点でした。頭の切り替えが大変だった。教室で日本語で講義をした後などの時間は、別の英語の本を2ページほど声に出して読んで、日本語から英語へと言葉とリズムを切り替えてから、こちらの編集の仕事をしたりしました。大変だったけど、取り組んだ甲斐があった仕事でした。
とにかく刊行できてホッとしています。